龍の瞳の生産者さん

龍の瞳の生産者さん

 

龍の瞳の生産を始めた当初、私を入れて「八人衆」と呼ばれる志のある生産者が集まった。

当時は低農薬の概念が今ほど広まっておらず、農薬を使わないという生産者は「変わり者」とみられていた節があった。農協や行政の指示に従って、決められた日にちに決められた農薬を散布することが普通に行われていた。現在でもそれはほとんど変わっていないのであるが、農薬不使用や「低農薬」への関心が強くなり、消費者の受け止め方が大きく変わってきたことは間違いない。

その中で「龍の瞳は作りにくい」、「農業生産の役から降りた」などの理由により2年ほどで栽培をやめられた方がいた。その後、株式会社龍の瞳の内部で深刻な「紛争」が生まれ、そのあおりもあって生産者グルーブが離脱するという大事件が起こった。その結果、在庫の山が膨れ上がり、不良在庫は買い取り価格で4000万円を超える事態に。

まさに会社存亡の危機が訪れ、私はその処理に4年余りを費やすことになる。経営的にも精神的にも非常に苦しかったのであるが、振り返ると根性が鍛えられるという意味では、非常に良い経験をしたと、今になって思う。

龍の瞳を作らせてほしいという声が全国の生産者さんから寄せられ、アポなしで突然訪問されるということもあったし、電話も良くがかかってきた。

私の考えがふらついていたため、相手によって対応が違ってしまい、「運」が良い人も悪い人もいろいろだった。

県外の生産者さんはについては、栽培管理が難しいことから、最終的には栽培をお断りすることになったものの、「作らせてもらってありがたかった」と感謝の言葉をいただいた。

生産者さんは基本的に個人経営者の立場で、いわば「社長」でもある。自分の意に沿った肥料や農薬を使用して育ててきたという「自負」や「こだわり」があり、すんなりとは言うことを聞いてはもらえない。

私はこの数年、販売を優先しなければいけない事情があり、生産者さんとの接点が少なくなっていた。しかしながら、一番重要なことは、美味しくて安全なお米を作ることだと気づかされた。品質管理をきちんとしないと、消費者のみなさんからのお叱りが増え、弊社の事務員も大変になる。消費者のみなさんからの口コミの力は絶大で、私がいくら龍の瞳Ⓡが美味しいですと言っても、ひとたび失われた信頼を取り戻すには相当な時間がかかる。

さて、この間、いろいろな栽培方法を模索し続けてきたものだから、生産者から「方針がころころ変わる」、「生産者を実験台にするな」などという苦言もいただいた。

真摯に受け止めて、「その通りです。申し訳ありません」と謝る。生産者さんと誠実に向き合うことで、つながりが強化され、会社側に間違いがあっても「仕方がないなあ」と許してもらえる関係がある程度作られてきていると思う。それに甘えることなく、自らの責任を自覚して、共に歩もうとすることで、さらなる信頼関係が築かれるに違いない。

この一年くらいの間に、20人近くいる生産組合長の内4人の方が入院・手術されるなど健康状態が心配されるケースが出ている。また、56歳という若さでがんになり亡くなられる生産者もいた。私としても、がんに効くという健康食品を差し上げたりしてきたものの、いかんせん高齢化が進む中では限界もある。

龍の瞳Ⓡという稲を作っているという誇りと自負は本当に強いと感じている。そんな生産者とは、いつか亡くなられるその日まで、一生のお付き合いをさせていただきたいという気持ちで、毎日を過ごしている。もちろん私が早い場合もあるものの―。この原稿を書いている本日も、これから岐阜市まで生産者との会議に出かける。本当に、話ができるのが、楽しみなのである。

 

生産者とガンバロー三唱

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